緑内障外来
緑内障とは
緑内障は眼圧の影響を受けて網膜の神経が弱る進行性の病気です。視野の一部が欠けるところから始まり,ひいては視力の低下を生じます。わが国では40歳以上の20人に1人が緑内障というデータがあり,糖尿病網膜症とならんで最大の失明原因となっていますが,適切な治療を行うことで失明に至ることは稀です。
緑内障の診断
緑内障診療においては,まず正しく診断をすることが重要です。緑内障の診断には従来から眼圧検査,眼底(網膜)検査,視野検査が中心となっていますが,この3本柱だけでは緑内障と紛らわしい先天異常や血管閉塞疾患との鑑別診断が困難なケースがあります。そういった際に私たちはOCTを用いて診断の一助としています。OCTは網膜の断層写真を精密に撮影し,神経の厚みを測定して正常データベースとの比較を行うことができる有用な器械です。
緑内障には様々な病型がありますが,病型診断は治療方針の決定における重要な要素です。そのために私たちは一般的な細隙灯顕微鏡検査や隅角検査の精度を上げることはもちろんですが,前眼部OCT(患者さんに負担をかけることなく隅角周辺の断層像を撮影できる)やUBM(超音波による眼球断層像を動画で見ることができる)などの器械を駆使しています。
緑内障の治療
緑内障は治る(良くなる)ことはありませんので,治療の目的は眼圧を下げて進行を抑制することにあります。眼圧を下げる手段として薬物治療と手術治療があります。私たちは眼圧,病型や進行の程度,そして患者さんの年齢などから総合的に判断してオーダーメイドの治療を提案しています。
基本となるのは点眼薬による薬物治療です。まずは1剤から始めます。病状の進行があれば,さらなる眼圧下降が必要ですので点眼薬の追加をしていきます。内服薬を口に入れるのと違って点眼薬の使用はただでさえ難しいところがありますし,それを1日に何回も,そして毎日繰り返さないといけないというのは患者さんにとってかなりの負担だと思います。点眼薬は3~4剤の使用が限界となりますので,その次は手術治療を検討することになります。手術は目にメスを入れるものですので危険も伴いますが,タイミングを逃すと病状の悪化に繋がりますので,必要時には躊躇なく手術治療を提案するように心がけております。
当科での緑内障手術件数は年間500以上と全国トップクラスです。線維柱帯切除術や線維柱帯切開術のほか,難治症例に対するチューブシャント手術も数多く行っています。緑内障手術においては術後の管理が重要です。ここでも躊躇なく適切なメンテナンスを行うことを心がけており,入院期間はほとんどの場合1週間以内です。
特殊外来
新生児・乳児・小児期の患者さんを対象として,小児緑内障の専門外来を設けています。通常の状態での検査が難しい場合は,必要に応じて全身麻酔での精査や手術を行っています。
病診連携
当科に受診される患者さんの多くは,お近くの「かかりつけ眼科」から当科に御紹介いただいた方々であり,互いに連携して診療を行っています。大学病院という性質上,急性期の患者さんの診療を行うことが私たちの責務と考えております。急性期には当科での診療が主体となりますが,病状が落ち着いた患者さんは徐々に「かかりつけ眼科」が主体の診療体制にシフトいただいております。
研究
一人一人の患者さんの診療に勤しむだけでなく,私たちは将来の緑内障診療に役立つエビデンスを求めて様々な研究を行っています。具体的にはチューブシャント手術の有効性・安全性を確認するための臨床研究などです。