名誉教授からのメッセージ
広島大学視覚病態学教室(眼科)が目指すもの
初期研修医の皆さんへ
医学部を卒業し、初期研修を終えようとする先生にお伺いしたいことがあります。先生ご自身はどのような医師になりたいのでしょうか。世間ではどの様な医師を求めているとお考えでしょうか。医師に求められているお仕事は多岐にわたります。大学病院に求められる機能として教育、研究、診療があります。もちろん良い医師として診療に携わることは大切です。基礎研究や臨床研究を自分からする人も必要ですし、その研究者を支援する組織も必要です。学生や研修医を教育する医師も欠かせません。厚生労働省に医系技官として勤務して日本国の医療行政に携わる医師も必要です。医政を通じて行政の仕組みを理解し、将来は広島県や広島市など、行政の長になることもできます。そこから国会議員、果ては総理大臣に登ることも不可能ではありません。医学部の学生の頭脳が優秀であることは明確です。その優秀な頭脳を生かして世界のIT企業(Big Tech)に就職する医学部生も出てきています。
広島大学眼科学教室が提供できるのは眼科関連のより良い医療人を育てるプログラムです。きわめてオーソドックスなプログラムといえます。最初から「広島から世界に情報発信する」なんて不可能です。研修1年目の医師には眼科診療の基本、学会発表と論文作成など、医師として基本的なお作法を学んでいただきます。次いで関連病院で勤務し、自分の責任で手術を含めた眼科診療を経験します。全国学会や国際学会(コロナおかげでこの2年は難しかった)で発表する楽しさも経験でき、未熟ながら一応眼科医として自信をもって行動できるようになります。この時点で次の人生を考えてください。海外留学したい、あるいは何をしたら良いのかわからない人は大学院に入ってください。基礎系の研究もあれば臨床系の研究課題もあります。希望があれば学外に紹介することもできます。専門領域で有名な国内施設への留学も大歓迎です。医療に関する研究を製品化することが推奨されています。製品の研究、開発を支援する大型資金を国が提供する仕組みもあります。厚生労働省やその機構に出向すると世間の研究の流れ、国の仕組みが良くわかります。その期間は短期間、長期間を問いません。いずれの道も患者さんにより良い医療を提供することにつながります。霞が関への出向は大学からの支援もあり、おすすめです。自分のステップアップのための武器を与えるのが医局の使命と考えています。
最後に一言、お給料を非常に気にする若い人がいます。お金は大事で当然とは思いますが、給料は医師の能力に比例します。何もできない医師は高い給料をもらえません。
医局の日めくりカレンダーにある格言です。
若いときに流さなかった汗は年老いてから涙になる。
この世の中で我慢の時無くして夢を実現した人は一人もいない。
とはいえ眼科研修1年目の医師でも、大学病院からの手当ての他に外部病院の診療支援でそれなりの収入を確保しています。
眼科名誉教授 木内良明